こんにちは、藤森永子です。
シェイクスピアによる冬物語は、冬の間に語られる物語。
ほんわかとしたイメージを感じますが、
家族の離散と再開の話で、
必ずしもハッピーエンドではないかと私は思います。
シェイクスピアが残しているのは脚本です。
誰が何処で何を言ったのか、
それくらいしか書かれていません。
どういう身振り手振りで、どういう目線で話すのか?
演出家や演者によって幾らでも情景を変えられ、
結末を変えられるのが、
シェイクスピア作品の面白いところです。
冬物語が公演されると知って、
翻訳家&演出家の事前講座がついているチケットを買いました。
翻訳家&演出家の松岡和子さんは過去に何作品も冬物語を見ています。
最後の目線1つで、話がハッピーエンドかアンハッピーエンドか、
決まると言いました。
特別ゲストで演者の一人が事前講座に参加されました。
最後のシーンでは、舞台に立って、
ほかの演者と同様、客席むいているので、
とある女性の目線がどうかなんてわかりません。
ハッピーエンドだ、
そう思っていた演者でした。
さて、冬物語の上演です。
最後のシーンの目線まで、目が離せません。
冬物語はとある家族の離散と再開の物語です。
夫が妻の不倫を疑い、家族は離散していきます。
息子は不倫相手の子だろうと、夫は息子を死に追いやり、
うまれたばかりの娘も不倫相手の子だろうと、
部下に殺害を命じました。
妻が、不倫は誤解と言っても聞き入れません。
不倫相手とされたのは、夫の友人。
不倫の濡れ衣を着せられ、遊びに来ていた友人は、
殺される前に急いで帰るしかありませんでした。
子供たちが相次いでいなくなり、
ショックで妻も亡くなりました。
信頼をしていた神殿の信託で、「妻は潔白」。
不倫などしていなかったことがわかっても、
息子も娘も妻も帰ってきません。
夫が毎日悔やんでも、もう遅いのです。
ところが、娘は生きていました。
殺害を命じられた部下は娘を殺すに殺せず、
海辺に放置。
それを漁師の親子が見つけて、育てていました。
娘が大きくなって、親子の対面があり、
最後のシーンになります。
もちろん夫はこれまでの事を謝ります。
謝罪を受け入れハッピーエンド、とみえるものの、
視線は夫に向いていません。
妻が息子や娘のワンオペで頑張り、
無事育ったところで夫が「これまで何もしなくてごめん」
と謝っても、妻は夫に何も思わないわけではないと思うのです。
冬物語では子供2人を殺されました。
娘が生きていたからといって、
これまでの事を忘れて昔のように仲良くできるかと言ったら、
難しいと思います。
夫が家事育児をやらず、子供が独立したところで熟年離婚。
その理由をみた感じがしました。
夫に目線が向いてない、ただそれだけの表現で、
アンハッピーエンドに感じた作品でした。
舞台にいる演者は目線を知りません。
ハッピーエンドかアンハッピーエンドか、
本当はわかりません。
視線を見ることができる観客だけが真実にたどりつけます。
シェイクスピア作品おそるべし。
婚活して、結婚して家庭をもち。
ハッピーエンドに思っているのは夫一人だけで、
妻や子供もそう思っているとは限らない。
家族みんながハッピーな家庭をつくることが大事だと改めて思いました。